「ゴ、ゴホン」と咳ばらいを
一つして気を取り直す。
改めて、学校への道を歩きだそうと
すれば少し遠くのほうに見なれた後姿。
思わず足早に掛けだして、
ターゲットとなったその人物の元へ。
距離が縮んだところで、
背中目掛けて大ジャンプ。
「かーなこっ!おはよぉ」
香夏子の白く、細い首に腕を回し
ニコニコと笑う。
「・・・・・・」
一方の香夏子は何も言わず、
ただ立ち止まっていた。
背後から抱きつくと、相手の表情が
分らないのが難点だなあ。
なんて考えていると、
やっと香夏子が口を開いた。
「・・・・・離して」
・・・・・これまでに怖ろしい
「離して」があるだろうか、
いや、ないねうん。
それほどまでに低く冷たい
香夏子の声は私に効果抜群。
光の速さで私は
香夏子の首から腕を離した。