「え、一之瀬くんも帰るの?」
 
 


「‥悪い?」
 

そう言って螺旋階段を下り始めたので
私も慌ててついていった。


 

「いや、そうじゃなくて。
 えと、もしかして
 待っててくれたの?」
 

 
 
「‥‥。」
 
 
 
 
「えと、」
 
 


「名前」
 
 
 

「へ?」 




「名前は?」



「あ、えと笹山菫です?」



「‥何で疑問形?」



「な、んでだろう?」
 
 

「くすっ、なにそれ。
 じゃ俺帰るから。またね。」
 
 
 
ガラス扉の鍵を閉め、
そう言って帰ってしまった。
 
 
 
 
 

(一之瀬くんが笑った。)

 
目をひそめて笑った彼は
本当に綺麗で。
胸がドキドキした。 
 
 
 

私今何て言った?

ドキドキ?
なんで?どうして?
 
好きってこと?
 
そんなわけないじゃん。

出会ったばかりなのに。
 
変な私。
 
 
 
 
(よしっ私も帰ろっと)
 

そう言って図書館に本を返してから
自分の教室に戻った。