「何で逃げるのよ!」
「追いかけたら逃げますってー」
「悪いことでもしたわけじゃないでしょ!」

押し問答のように会話していると、岡田ちゃんは、はあ、とため息をついた。岡田ちゃんは明るいピンクブラウンに染めた髪を適当に束ね、ナチュラルに近くて遠いすっぴんともいえる薄化粧の女性だが、持ち前の美人さでカバーしている。

「結婚のほど遠い鬼みたいな顔って岡田ちゃんの事をいうんですね!」
「だまらっしゃい!」

岡田ちゃんはまたため息をついて、話し出す。

「あなたが、あまりに成績が悪いからって他の先生方とも話し合ってね、和泉春人くんにあなたの事を頼んだのよ。」
「誰ですか?」

イズミハルト?
先生の言った言葉を反芻する。

「入学当初から首席をキープしていて、先生の中での期待も高い子なんだけどねー。一年なのに図書委員長だし、」

うへ…。
どんだけすごい子よ。

てか、そんなハイスペックな脳についていける私じゃないんですが。