「…き、」

大好きな声が、頭の奥に届く。重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
「…ハル、なんで、いるの?…ちゃんと、帰ってくるって言ったでしょう?」


ぎゅうぎゅうと私を痛いほど強く抱き締めるハルの肩が小刻みに揺れていた。

「泣くほど辛いですかな、私がいないのは、」
恥ずかしさ、とそれに勝るほどの愛しさが私をこそばゆくさせる。

「馬鹿が」

負け惜しみのように、ハルが吐き捨てる。

「当たり前だ」

小さな声だった。そう聞こえたのは聞き間違いではないはずだ。

私は、ゆっくり、いつかのあの日みたいに、背中を撫でてやった。


―…