「おれは最初からこーゆー役目だったんだ。来るべきときに君をもとの世界に導く。…この世界の不調和をなくすため、ただそれだけのためだったんだ」

「でも、あんたは普通の人間でしょう?」


私の問いに羽津が笑う。
「おれはアイリスや多季…?だっけ?彼らと似ているんだ。ちょっと違うのは、おれは彼らに似ているってだけで、同じなわけじゃない。…おれの意志とは無関係にそのためだけに産み落とされた存在なわけですよ」

「じゃあ、あっち帰っても、羽津には会えないの?…それだけのために、生きてるなんて」


辛くない?
私のその言葉は羽津の指で遮られる。そして困ったように笑う。

「おれの頭はねー、生きる意味に疑問をもつだとか、そんな高度なこと考えられないようになってんの。だからつらくなんかないんだよ」

ぎゅっ、と心臓がいたくなった。
じゃあ、

「困ったみたいに笑わないで、」

むぃ、と私の上にある頬を引っ張った。

「ひらい、ひらい、ひらいっ(痛い痛い痛い)」


私が手を離すと、相当痛かったらしく、頬に手をやって涙目になっている。