初めてみたいな、粗っぽい、ぎこちない、手つきで多季に抱き締められる。

「ちゃんと、連れてってくださいね?」
「もちろん」


ポーン、という音がする、多季が空に文字を刻んでいく。

さよなら、みんな。
寂しいと思うくらいは良いだろうか、不幸じゃないもの。


アイリスと多季の体から光が溢れ出す、命が、力が還っていくのだ。

「ねぇ、――――…」


多季が光に溶けるように笑って言った。アイリスはこの言葉の響きをきっと忘れない。

私も愛してる。


これが終わりだなんて思えないくらい満ち溢れてる。そんな人はこの世界にどれだけいるだろう。
私は幸せ者。


―…
――…
―――…