サリサに言うと、ふるふる力なく首を振った。

「あなたを元に戻しても、すべて解決なんてしない。…だって、"化ケ物"にしていたのはあたしじゃないんだもの」

「じゃあ、…誰が」
「あたしが完全でない理由、奥底に眠るアーベル様の最愛の姫君…リリィ様よ…彼女が寂しい、寂しいって呼ぶようにそんなことを繰り返すの」


ふふっ、と息をサリサは吐き出した。
彼女も狂ってしまった1人なのだ。私は、じゃあ、と繰り返す。

「そうよ、全てを終わらすには、結局あなたの体が必要なの。…封印と還すという作業には体という器がなくては成し得ないこと…」


みしみしと空間の軋む音がする。
サリサは自分と合わせて二人分の精神を抱えている。だから本来1人のためだけに存在するはずのこの空間は負荷に耐えきれず脆くなる。
最初に感じた違和感はそこからだったのかと一人で納得する。


途方にくれて息を吐いた。
ハル、
私は彼に呼びかけた。その声は届くはずもなかった。


ー…