目の前にある咲の体は、今はもうただの器。咲の精神をサリサは吸い込んだんだろう。

次にこの体に宿るのは、

そんなことを考えて、頭を振る、前見てることしか出来なかった分、今動かなくてどうする。


サリサの目的は、咲の体を奪って、死ぬこと。
何故?

あの時、中途半端な形で地上に留まってしまったから、だから、還ることが出来ないんだ。

じゃあ、還してあげればいい、でも、どうやって?
そんな莫大な力、ない。

アイリスはため息をつく。
「可愛い僕の姫君は何をお悩みかなー?」


くすり、と笑いながら、アイリスを後ろから抱き締める多季。

相変わらず、軽い男ですのね!!

「今はあなたを相手にしているヒマはありませんの」
「つれないなー、ま、夜の散歩と洒落込もうよ?」


パチン、と多季が指を鳴らすと、アイリスと多季は次の瞬間、図書館の屋根の上にいた。

「なんですの!!」
「ホントはもっと遠くに行きたいんだけどねー。アイリスも囚われの身だもんねー」


全く話を聞かないところはあの時のまま変わらない。はぁ、とため息をつく。