「もー、なに?」
「なんでもないよー…、いい感じにまとまって嬉しいなって思ってねーっ」

少しわたわたしたあと、むー、抵抗するように言う。

「定期考査もいい感じにまとまるといいねー、確か次赤だと、追認だっけ?」
「う…、…ひどい…いい感じに忘れてたのに…」


私がさめざめと泣き真似をすると、千亜はにやーっと笑って、

「でも和泉くんがいるもんねー!!」
「う…るさいなぁ…!!」


千亜が元に戻ってくれて、本当によかった。
じんわり、心に温かさこもっていく。優しい時間がゆるやかに流れ出す。

でも、私は気付かない。
この時間が長くは続かないことを、影のようにゆっくりと私たちの方に忍び寄り一気に呑み込んでしまうことに。



―…

「図書館を護ってくださいね!!化ケ物はさくさく退治しちゃってください!!」

アイリスがさも簡単な事のように腰に手をあて、私たちをせかす。夜の図書館は何度来ても不気味だと思う。図書館でそんな化ケ物退治をしていて、尚且つそれに関わっているのは図書委員でも数少ないらしく、今日の当番は私とハル…と、


「納得いかないんだけど…なぁ…わたしは。」

そう言って隣で、可愛らしく頬を膨らませる千亜。今日の当番は本当は羽津だったのだけれど、

「仕方ないですの。…羽津とは何故か連絡がとれないんですから…」


最近、羽津は学校に来ない。来ているのかもしれないけれど、会わないし、ケータイに連絡しても全く反応がないのだ。そのため代打として千亜が毎度駆り出されてしまうのだ。