その電話から聞こえたのはは幼い頃よく聞いた声だった。

「…お父さん!!」


自分から一回電話したけど、今は全く心構えが出来てない状態で、武装不足。
跳び跳ねた心臓を押さえつけながら、辛うじて声を出した。


「久しぶりだな。咲からの電話の履歴を見てとてもびっくりしたよ」

「…だったら、早く電話くれれば良かったじゃない」
「仕事でね…咲こそ、おれの電話を無視してただろ?…反抗期は終わったの?」


お調子者のような口調。
仕事って、あんたはそれしかないのか。

「会える?ていうか、毎回用事が合ったからずっと電話してたんだよね?それ聞こうかと思って」


イラッとして思わず語気が強くなると、怒ったぁ?ゴメン、ゴメン、と謝ってくる。
それもイライラするんだけど。

「今日、昼休みに会社抜けてくるよ。会社の近くの喫茶店ならわかる?そこで待ってるから。」


「わかった。」

これで終わらせようと思った。
私は電話を切ってベッドにケータイを放り投げた。

昼までの時間はあるけれど移動時間を考えるとそんなにない。
私は支度を始めた。