隣の部屋に走っていく千亜を追いかけ私たちも入る。
「…健くんっ!!」

千亜に揺り動かされて、笹木を目を覚ました。
「…ん…、千亜?」

「…どこも…変なとこない?」

笹木はぐるり、と視線を巡らせて、


「…うん、別に大丈夫だけど」

「…った…」


ため息と一緒に千亜は言葉を吐き出した。
「…よ、かった…ぁ」

まだ泣き声をこらえようとしているのか嗚咽がもれる。 肩を揺らしながら、涙がぼたぼた落とす。


「…千亜!!え?ちょ…なんで…泣かないで」

「…我が儘いうから…聞いてね」

鼻をすすりながら千亜が笹木を見て言う。


「…好きだよ、…ずっと、一緒にいて…」

「…え?」


千亜の言葉が理解出来なかったのか、一瞬戸惑い、一気に顔を赤くする。

「…あ、えっと…いいの?」

聞きながら、優しい手つきで抱きしめた。千亜はこくりと頷き、泣き笑った。



「…あー、完っ壁に私たち空気だね」

「だな…」


私は和泉と話していると、入ってきた人がもう一人、
「ありゃ?もう終わっちゃいました?」

「…羽津、てめぇ、遅すぎなんだよ…どんだけ大変だったと…」

恨みがましく羽津に言う和泉に、

「…まぁ、一件落着っぽいんで良いじゃないですか、二人も幸せそうですし…遅れた理由は、ラーメン屋に並んでたからなんですけど…有名店過ぎて食べるまでに時間がね」

けろり、と遅れた理由まで言う羽津。
「…てめぇ…、ちゃんと治療に回れよ」


相変わらず軽い羽津に諦め気味に言った。