「生き物は死ぬと必ず何年、何十年、何百年か後に同じようなモノを共有出来る、される個体が生まれる…それが“共鳴者”」

「あたしの魂も例えばこのコ以外の身体に入ってしまうと、その身体自体があたしという異物を拒絶してすぐに使い物にならなくなってしまうの…けれどこのコなら、あたしと共有できる…!!」


どれほど探し、求めたことか…、そういって叫んだ。多季は今度は笑わず、俺に無表情に言ってのけた。

「多分、咲の方にも変化があると思う…なにかが少しずつ合わさり、溶け合う」
「…あたしはやっと最期を全うできるのよ」

「…死んで、何があるんだよ…?」


俺が呟くようにいうと、

「同じ場所にいくためよ…故にあたしは死を欲するの、そのための犠牲、我慢してちょうだいね?」

なだめるように俺を見て言う。そんな顔を咲でするな…ふざけるなよ。


「我慢なんてするかよ!!…諦めるわけねぇだろ!!」

欲しいって、思うんだよ。消えて欲しくないんだ。
初めてこんなにも失いたくない、と思う強い執着。

「…咲っ!!起きろよ!!…起きてくれよ!!」

俺が叫ぶと、意味もないことを…と多季が言う。

「咲…っ、さ…」
俺が何度も呼んでいると、

「ぅ…っ、ぁあ」

「…サリサッ!?」

突然その場でサリサは苦しみだし、息を荒くし始めた。

「大丈夫か…?…サリサ」
「…まだ、時期尚早みたい、っ…あたしを、押し出そうとする反発が、すごい強い…眠らしたっていうのに…彼の呼び掛けに起き出したっていうの…?」


近くに多季はかけより、背中をさする。
「…ぁ…っ、いや…、ぁぁあ…!!引っ張られる…飛ばされる…っ!!」


「…咲っ!!」

ぐらりと大きく傾き、咲の身体はどんっと床に打ち付けられる。
俺は倒れた身体を抱き寄せた。つまらなさそうな顔をして俺を見て言う。

「…まだだったのかぁ…あーあ…」

「…多季!!」

「これで終わりだなんて思わないでよ?…時期は必ず来る、それは決まっているコト。…サリサとこのコが繋がり始めてる、それは記憶だったり、感触だったり、ね。ま、せいぜい足掻いてよ、タイムリミットまで」

ひらひら手を振りながら、背中を向けて歩き出す。
リズミカルな靴の音が遠ざかっていく。


「…そうそう、“化ケ物”になりかけてた子達は無事だと思うから、どっかに移動させてあげてよ。アイリスももう起きるとこだからさー」

じゃあねー、そんな言葉を残して消えた。



―…