「…あたしは今精神体なのよ、ひとつはこの場所に、もう一つは…この本の中に…」


サリサは手を広げて、赤い表紙のあの本を出現させた。アイリスが持っているハズの。

「…お前ら、…アイリスをどうしたんだ!!」

「えー…?…眠ってもらっただけだよ」

くしゃりと自分の髪を触りながら、多季はなんてこともないように言う。


「大丈夫よぉ、このコみたく貰ったりなんかしないから…」

「貰うって、なんなんだよ!?…どういうことだよ!?」
「あたしの願いには必要なのよ」


服の裾を掴んでまた一回転ふわりとまわる。
願い―…

なんだそれ?

「もう一度、…いえ、今度はちゃんと死ぬ為よ」


死ぬ為?
「でも、あたしの身体はとうに散り散りなってなくなってしまったの。だから、…必要なのよ。この子の、現世で一番あたしに近い共鳴者」

喉の奥がカラカラに渇く。
いいでしょ?

とサリサが上目遣いに聞く。

「…死ぬ為って…咲は…どうなるんだよ?」


満面の笑みを浮かべて言った。


「死ぬわよ、そのための共鳴者だもの」

「共鳴…者?」


そうそうと多季は俺の方へ向かって歩いてくる。にこにこ笑っているが、口が笑っていないため何を思っているのか全くわからない。