「すいませんね」


悪びれもせず謝る多季。

「…許してあげるわ、だってもうすぐ、あたしの夢が叶うんですもの」

楽しくって仕方ないわとでもいうようにくるり、とサリサは回った。

「なんで…っ、なんで…咲ちゃんの体で喋ってるの?…あなたがサリサだっていうなら咲ちゃんはどこにいったのよ!?」


秦野はもう立ってられないのか、座り込んだ体勢でサリサにかみつく。肌は傷だらけで、触ってしまったら壊れてしまいそうだった。


「ふかぁーい場所で眠っているわ。…ていうか、あなた何?まだいるの?」

「…な!!…あなたたちのせいでしょ!?…わたしも健一くんも…こんな風になったのは!!」


掴みかかりそうな勢いでサリサに怒りを露にするが、涼しそうな顔でふぅんと呟く。

「じゃあ、もういなくなってもいいわよ?だって…不必要かつ無意味だもの」


秦野の顔を覗き込み人差し指でおでこをとん、と触った。
その瞬間、どさりと倒れこむ秦野。

「秦野っ!!」

よいしょ、と小さく掛け声をして隣で倒れている笹木の額にも手を当てた。


「何してんだよ!!」

「…やぁね、怖い顔」

赤い舌がちらりとのぞく。多季はバカだなぁとでも言うように首を振った。


「せっかくサリサが化ケ物じゃなくしたのに…ねぇ?」


「そんなこと…できるのか…?」

「出来るから言ってんでしょ」


サリサを見ると目を細め頷いた。確かに倒れた秦野は正常に呼吸もしていて、苦しそうな様子もなく、ただ眠っているだけのようだ。笹木も然り。



「あたしだってなんでもかんでも“化ケ物”にしてるわけじゃないのよ。治してあげたんだから感謝してほしいくらい」


咲と同じ声、顔を使って喋るサリサを見ているのは不思議な感覚だった。


「だから、このコの身体はあたしがちょうだい?」

楽しそうににっこり笑って自分を指差しながらながらそんな提案をした。
今、目の前にいるのはサリサだけど、身体は咲だ。

つまり、咲の身体が欲しいと…。


は?