俺の手を振り払い立ち上がった。
そして俺に笑いかける、その顔は咲そのものだった。

でも、違う。
ひりつく頬に手を当てながら見据えた。

「なんでわかっちゃったのかしら?」


「生憎、俺のヤツはもっとあったかいガキみたいな手してるんでね」

「あらすごい独占欲…素敵」


ふふふと笑った。妖艶な薔薇が花開いたように、酔ってしまいそうな香りがその場に立ち込めた。まるで品定めするかのように俺を見る。

「きれいな顔ねぇ…、溜め息がでちゃうわ…」

そう呟いたかと思うと一瞬で俺の背後に移動し、抱きついた。

早い。
どう考えても俺より腕がたつだろう。

というか、咲でないならこいつは誰だ?
横目でちらりと盗み見ると微笑み、俺の頬にしっとりとしたモノを押し当てられる。
唇に指を当て、

「仲良く、して頂戴ね?」

楽しそうに微笑んだ。

「こら、あんまりいじめないであげてよ?…サリサ」

「…!!」


サリサ?
俺はもう一度咲、サリサを見つめた。


「えぇ、わかってるわよー、…というか、いじめてなんていないわ。失礼よ」


俺からするりと離れると、多季を指差して言った。


「あたしを目覚めさせるの、あんたが遅すぎなのよ」