先制にしてクリティカル・ヒット。

強烈な一撃で恵は茫然とよく動く大場の口を見ていた。
その中から適格に必要な情報だけを掬いとる恩河。

この二人……本当に人間…?

別々の意味で超人的な女性を前に、恵は早々に両手を上げた。


呆気にとられていると、不意に恩河がバッグを持ち上げた。

「さ、行こうか恵ちゃん」

「あ、はい!」

大場の家を出て、完全に声が聞こえなくなったところで恵は恩河に囁いた。

「……何を言ってるかわかりました?」

「ええ。わからなかった?」

「………はい」


小さくなる恵を見て、恩河はカラカラと笑う。

「やってるとそのうち慣れるよ」

………そうかなぁ……


恵が大きく首を傾げると、また恩河は笑って足を踏み出した。

「さ、樋山さんって人のところに行こうか。せっかく見つかったんだし、またどっかいかれたら困るしね」

「はい!」