突く匂いに、炯斗は鼻を押さえて呟いた。

「……焦げ臭い」

「何を当たり前のことを言ってるんですか? 火事の現場なんですから」

「二人とも、こっちだよ」

言乃は、呆れた顔を炯斗に向けてから高橋の後を小走りについていく。

「…何かさ、誰かの移った?ことのん」


少しさみしいような悲しいような…

炯斗は首を捻りつつ、筋の出所のドアを開いた。

「うわぁ……」

思わず顔をしかめた。

カーペットの一部に穴が空き、周辺の焦げ痕がひどいことからそこが火元とわかる。

カーペットを中心として、家具は焼け焦げ、ベッドの布団、シーツやマットは原型を留めていない。

カーテンもレール部分のみが残り、ない窓ガラスの代わりに場違いなくらい穏やかな山の木々が腕を広げて、風が吹きさらす。

窓側から中を見ると、焦げが際立ち余計に暗く見える。

「ヒデェな…」

「火事現場なんてこんなものさ。仏さんがいないだけいいよ」


高橋ははい、と二人に白い手袋を手渡した。