螺旋階段を上りながら、吹き抜けから顔を窺うように高橋がのぞく。
何だか楽しんでいるようである。

「宿帳には、彼の部屋は四階と書いてある。けれど、彼の荷物があったのは三階」

「間違えたんじゃね?」

階段を上りきり二階に着く。
螺旋階段はここで終わり、左右に伸びる廊下の角を曲がると宿泊部屋が並ぶ。
その突き当たりに、三、四階に続く階段がある。

「いいや、鹿沢は確かに四階にいた。彼の毛髪と指紋が部屋から見つかっている」

「何それ?」

「わかんないんだ。ただ、出火したのは四階。火元は鹿沢の持っていたライターだと判明している」

突き当たりの階段を上る。ここは螺旋ではなく、ふつうの階段だ。
螺旋階段が慣れていないせいか、三階まで上がるのもなんだか疲れる。
少ししか上っていないのに、上を三階、下を二階と示す表示を見て、まだあんのかとため息をつき階段に足をかけた。

「炯斗くん」

声を出さずに振り向く。
ややこしいことになるので恵以外の人間の前ではあまり普通に会話しないようにしているのだ。

「上の部屋から見てみましょう」

「オッケー」

言乃に囁きで返して、その旨を高橋に伝える。
了解の声が聞こえ、そのまま四階まで上りきる。

四階は、廊下からもう黒く煤けた部分が多く見えていた。