一行は一度昼食を摂りに花守荘に引き返し、落ち着いたところで捜査員のほとんどがロビーに集結した。
そこに高橋と共に炯斗たちも参加する。
物珍しくあたりを見回せば、見慣れた影がない。
「あれ?ともちーは?」
「先輩なら、先に出たよ。それも大急ぎで成瀬さんを連れて……なんかすごい剣幕だったなぁ」
「何か言ったの?」
高橋はギョッとして考え込む。
え…あれって完全に許してくれる流れだったよね?
先輩もいいって言ったよね?
悶々とし、顔を青くし始めた高橋。
しかし彼はまだ知らない。
狸翠を頼ることに関して、朋恵が平生を失うほどの抵抗があるということを。
きっとまた郁美が電話をけしかけている頃であろう。
答えが得られないと察知した炯斗は適当に流してもう一度一同を見つめた。
こんだけの刑事が集まるとこに一緒に立つなんて、人生にあるとは思わなかったぜ
「よし、皆揃ったかな。とりあえず、知ってる人もいるかとは思いますが、午後の捜査の分担に変更があります」
それから順々に高橋が分担を読み上げていく。
その指示が終わる頃に、突然恵が声を上げた。
「あ、あの!」
全員の視線が一気に恵に集まり、身体をビクリと震わせた。
唇を噛みながらも耐えて、消えそうな声で言った。
「あの…私、聞き込みの方に参加したいなぁ、なんて……」
後半につれて声は弱まり消えてしまった。
それと同時に恵は顔を真っ赤して小さくなる。
「何でだ?」