朋恵は髪をかき揚げため息をついた。

「なんなのかしらね……死亡推定時刻は夜の11時〜2時辺り。でも――」


駅に書いてある時刻表の看板を振り返る。


「ロープウェイの運行時間は夕方で終わる。深夜にこんなもの簡単に動かせる人なんていないし、何より目立つわ」

「いいや、ないこともないですぞ」

「はい?」

きょとんと声のした方を見れば、ロープウェイの管理人が顔を興奮させて言った。

「ゆんべの間に思い出したんですがな、一昨日の夜はロープウェイが動いてたのですよ!」

「なんですって?」

朋恵は眉をひそめ、高橋はペンの頭をカチリと鳴らす。
二人の食い付きように管理人のおじさんはさらに顔を赤くしてまくし立てた。


「いやぁ…昼間は日常的に動いてるんで忘れてたんですがな、これは稼働してると音がするんですよ。
ロープを擦る音だったり、がね。

一昨日の夜はこの音がしとったんだが、ゆんべがあんまり静かなんで今更ながら気付いたんですわ。

いやはや、いつも聞いてるのになくなって気付くとはお恥ずかしい」