完全に機嫌を損ねた朋恵が立ち直り、現場に到着する頃には、レールにぶら下がっていた不可解なヒモは回収し終えたところだった。
炯斗たち三人に高橋、それからロープウェイの管理人に囲まれ、鑑識が簡単な調査をしている。
その輪に近づき、覗き込み、一番近い高橋の肩を叩いて尋ねた。
「それが例の?」
「あ、先輩! はい、そうです」
「で、結果は?」
鑑識の者が顔を上げ、一度ギャラリーを見回してから口を開いた。
「は! 形状や皮膚の痕跡から言って人間を縛っていたことは間違いありません。
鑑定をしていないので誰かと特定は出来ませんが、この状況からしますと……」
「まぁ、鹿沢氏以外に考えられないわね」
鑑識はもう一度敬礼をして、下がった。
ヒモの用途は判明した。
問題は何故、どうやってヒモがレールにぶら下がることになったのか、だ。