しかし携帯はツルル…と無機質な音を響かせ始めた。
思いっきり郁美を睨んでやるが本人はニコニコと見ているだけ。

しぶしぶといった顔でため息をつき、携帯を耳元へ運んだ。
携帯は未だにコール音。

ったく、わざわざかけてやってんだからさっさと出なさいよ……

30分も粘った人間の言うことではない。
だが朋恵はイライラと靴を鳴らした。
そして、その短い我慢の限界が達した。

「ああ! もういい!」

『おう、俺だ』

勢いよく終了ボタンに振り下ろそうとした指がぴたりと止まった。
この声…間違いない。アイツだ。

『おーい、どうした? 用がないなら切るぞ? もしもーし』

個人の携帯に掛けているため、間違えようもないのだが。
朋恵の形のいい眉が、キュッと寄った。

「用もなく私がアンタなんかに電話するわけないでしょ、狸ジジイ」

あちゃー、いきなりかぁ…
とかなんとか、隣で郁美ががっくりとする。

当たり前だ。私がこいつ相手に丁寧にするわけがない。

たとえ上司だろうとも。


父親であろうとも。













なぜなら……




生理的に大っっっっ嫌いだから!!!!