「最近、暁…掴まり立ちしよるやろ?」
「そうね~、もう少ししたら、歩き出すかしら♪」
「……掴まり立ちを始めたっちゅーことは、掴まれるものになら、何も考えずに掴まるっちゅーことや」
「そりゃそうでしょうね~、どれに掴まって良い悪いなんて…考えてないと思うわ~」
「……」

ココまで言っても、まだ気付かない美紗子
優希はいい加減、説明するのが面倒になってきたが、ココでやめたら暁の身が危ない
自分自身も安心して子ども園に行っていられない…ので、優希は説明を続ける

「今回みたいに、取っ手に掴まったら…掴まっただけなら構わんかもしれんけど、暁は動くんや
何の拍子に扉が開くか分からん…実際、今回扉が開いて中の物は飛び散ったし、暁の目の前に包丁が落ちてたわ
今回は床に落ちたから良かったし、自分が気付いて暁が触る前に取り上げたけど…
もし包丁が床に落ちずに、暁に当たってたら?刺さりはせんかもしれんけど…刺さらんとも言い切れへん
当たることろかて分からへんで、頭なのか顔なのか…手、足、腹…何処にだって可能性あるんや」

優希は長い説明を終えて美紗子を見る
美紗子は初めこそ何事も無いかのように聞いていたが、包丁が出てきた辺りから顔が青くなっていた
これで顔色が変わらなければ、どうしようかと思っていたが…その心配は無用だったらしい
優希は少しホッとしながら、視線を暁へ移す