地下室の腐臭に耐えきれず、足を踏み入れた瞬間に私は鼻を塞いだ。
血の鉄くさい臭いも交り、服装に気を使う身としては、あまり近寄りたくない類の部屋ではあったが、仕事だから致し方ない。
それも半分は済んでしまったようなものだが。
「………」
嗚呼やはり。
予想した通り、仕事は半分、先を越されていた。
問題は、積み重なった死骸の山の中に、私の標的がきちんと交っているかを確認できるか否か。
天井のカンテラには無数の羽虫が群がり、やがてこの死骸に卵をうみつけ蛆をわかせることだろう。
「……誰」
「おや」
かつん、かつんと靴音がした。
小さい割に妙に耳の奥に響く、その固い音は、おそらくなかなかの上物であろうと推測する。
こんな汚い場所に近寄るなんて、相当の物好きか。
部屋の奥の暗闇によく目を凝らして見れば、私は驚いて目を見張る。
男の子じゃないか。