そのとき、すばやく、ロイがあたしを支えた。


抱きかかえられるあたしとロイは、お互い見つめあって、一瞬、映画の1シーンのような態勢になってしまった。


「杏奈は、やっぱり《お嬢さま》って感じだな。身体が羽根のように軽い」

とロイが口を開いた。


「やだっ、体重までわかるの?」

「もちろん」

「もう。油断もスキもないわね、ロイは。おやすみ!」

「おやすみなさい。こけちゃ駄目だよ」


あたしの部屋までは、真っ平らな廊下なのに、ロイはそんなことを言って、部屋のドアを閉めるまで、あたしを見送ってくれた。


あたしは、振り返りながらも、助けてくれたロイに、小さく手を振った。


――ロイって、なかなかいい人じゃん。