「どうかな? これで、疑問は解けた?」


ロイは、にっこりと、あたしに笑いかけた。


「うっうん。ありがと。夜中にごめんね」

「杏奈は――」

「ん?」

「どうして、そのことを知りたくなったの?」

「え……」


それは、あたしにもわからなかった。
あたしは、少しうろたえて、言った。


「パパが、ロイのことを、マスターそのものだって言ってたのよ。だから、あたしは、なんとなく知りたくなっただけ」

「私は結婚してないよ。マスターも、いまはね」


あたしは、急にその場にいることが息苦しくなって、「じゃあ、また明日ね」とくるりと踵を返した。
すると、慌てたせいで、横にあった椅子につま先を引っ掛けてしまった。


「きゃっ!」