気がつくと、授業が終わっていた。


「なんか、バッドな夢を見たようですな」


とミズキが気の毒そうに言った。
あれ?…あたし、泣いてたのか。…


あたしは、恥ずかしさを隠すために、言った。


「おかげで、先生に当てられずにすんだようね」

「うんうん」


ミズキは、一見おちゃらけているけれど、賢い女の子だ。


「今日の登校のとき、なにかあったの?」

「あった、あったよ……。あたしの横を、手榴弾がドカーン!」

「ひぇー。新聞に載るわね」

「どうかなあ。また、反逆分子ゲリラを増幅させるからって、情報操作やるかもしんない」


実際、あたしが毎日のようにひどい目にあっているのに、それが公に出ることは、ほとんどなかった。


あたしは……、いままで、たった1人で、恐怖を耐えてきたんだ。