ボディガードの彼

授業中、あたしは、生あくびを抑えることができなかった。


あーあ…。朝から、バイオレンスが繰り広げられたもんだから、すっかり疲れちゃったわ。


横で、ミズキが、起きろとシャーペンで、あたしをつつく。
でも、あたしは、心地よい眠りにすーっと入っていってしまった。


…………夢の中。
元カレの雄太が、あたしになにか言っている。


「首相の娘になったからって、偉そうにすんなよ」

「偉そう？　あたしのどこが??」

「ボディガードなんか従えてさ。俺じゃ、おまえを守れないってわけ？」

「なに言ってんのよ?!　相手は武装した反逆分子の集団なのよ？　雄太１人でどうするっていうのよ！」

「やっぱり、そんなふうに言うんだな。ふん。なんか、おまえって、すっかり変わっちゃったな」


雄太は、そう言って、あたしを喫茶店に置き去りにした。
喫茶店の出入り口には、ＳＰがいたが、雄太は彼らを睨みながら、出て行った。
もちろん、ＳＰたちは、なんの反応もしなかった。


「雄太…。ここに来るまでに、あたしがずーっと誰かにつけられてて、逃げ惑ってきたことなんか、わかってないくせに……」


あたしは、その夜、思い切り泣いた。
雄太からは、その後、連絡が来ることはなかった。