まだ早いとは分かっているのに、ぽろぽろと目尻から流れ落ちる雫。

慌ててバッグからハンカチを取り出そうとすると、それより先に春海が指先で掬ってくれた。



泣き虫、と囁かれ少し睨み上げてはみるも自信に満ち溢れたような笑みによって流されてしまう。


…空気なんて読めたもんじゃないけど、今すごくキスされたいと思った。



前からクスクスという忍び笑いが聞こえて、ゆったりと視線を向ければ。

御両親が2人揃って優しく笑いながら私達を見つめていた。




「芯の強いお嬢さんだ。僕から目を逸らさないなんて、滅多にいないんだよ。」

「見んなよ。菫、このオッサン見てると妊娠するぞ。母さんみたいに。」

「親を存外にあつかうな春海。見つめたくらいで妊娠なんてしない。」

「そうよ聞き捨てならないわ。私はお父さんなんて興味なかったもの。」

「…おい、何故今?傷付くんだが。」

「仕方ないわ事実だもの。」



何故か卑猥な会話が交わされるのはなぜ。