「春海、彼女を紹介しなさい。」
凛とした、゙父親゙の声が私達の座る席を包む空間に響いた。
チラリ、隣に座る春海を横目で見上げれば。酷く満足そうな笑みを口角に作り上げていた。
「こちら、篠宮菫さん。結婚前提でお付き合いしています。」
「ご、御挨拶が遅れて申し訳ありません。篠宮菫といいます、宜しくお願いします。」
ぺこり、頭を下げた私の耳に次いで聞こえた愛しい声によって。私は顔を勢い良く上げて驚愕した。
「菫以外の女性は有り得ません。彼女よりいい女がいるとも思えないし。」
「ッ――――!」
「菫とじゃなきゃ、俺は無理だ。」
春海が言い切った、゙無理゙という言葉の中にどれだけの意味が込められているのかは分からないが。
春海が私を本気で愛してくれているんだと、改めて実感した。
潤み始める視界に映った春海は、柔和に、だがやはり意地悪く笑っていた。