彼女はくるりと振り返る。
涙を拭うこともせず、彼女は私をみてふわりと笑みを浮かべました。
優しく温かな。
冬の空、雲の間からこぼれ落ちる日差しのように、温かな、笑み。
「春蒔が、私の代わりに、時雨さんに幸福を蒔いてくれるように」
向き直り、彼女は彼の手をそっと、両手で包み込むようにしてとりました。
「春蒔の種は届きました?」
「ああ……お前のが、届いたよ」
「良かった」
彼は彼女の手に額を当てて、祈るように暫く俯いていました。
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