うかつだったと加奈は思った。
確かに慶太は自分に愛情を注ぎ、私しか見ていなかった、他の女の告白はすべて断っていた。
だから離れ離れになってもきっと慶太は加奈だけのことを思い、懸命に勉強に励むのだと思った。
しかし慶太が加奈だけを見ていたのは、毎日加奈と一緒にいたからだと分かった。
思い返せば告白されてから毎日、学校も放課後も、家にいないときはすべて加奈と慶太は一緒にいた。
だからいつだって慶太の性の対象は加奈であり、慶太は加奈で満たされていた。
もちろん加奈にいたってもしかりだったが。
しかし、加奈は実家に戻り、慶太にも月に数回しか会えない。
今の体では満足に慶太の相手もしてやれず、慶太も加奈の体をいたわり無理を強いるようなことはしなかった。
年頃の男が、沢山の女に言い寄られて、何もしないという選択肢があるわけがない。
加奈は、慶太の浮気に目をつぶることにした。
それが正しかったのか間違っていたのか今でもわからない。
慶太は大学を卒業して、就職先を決め、私を迎えに来てくれたし、きちんと籍を入れ、結婚式も挙げてくれた。
その浮気相手とはどうなったかは分からなかったが、「中華の素」以来その影は消えたように思われた。
その後慶太は順調に出世をし、加奈も2人目を身ごもった。
あの妊娠から15年たった今ではローンを組んで新居まで手に入れた。
傍から見れば申し分のない人生だと思う。
ただ、加奈は知っていた。
慶太は、また浮気をしていると。