はぁー・・・と、加奈は本日何回目かのため息をついた。
窓の外は雨がこれでもかというほど地面を叩きつけ、家の中ではこれでもかというほど洗濯物がひしめき合っている。
部屋干しというものは厄介で、部屋中に生乾きの嫌なにおいが立ち込める。
やっぱり、切れていた柔軟剤を買ってくればよかったと加奈は思った。
加奈は今朝、洗濯をしようと思ってスイッチを入れて洗濯機を回し始めた時、柔軟剤が切れていることに気付いた。
最近新発売されたそれは、この梅雨の時期にはありがたく、部屋干ししてもにおわないのが売りだった。
買いに行こうかどうか悩んだが、外は激しい雨が降っているし、すでに洗濯機は起動している。
雨の中買いに行って、柔軟剤を手に入れ、洗濯物を増やすか、
このままとりあえず、回した分は妥協するか、
加奈は後者を選んだのだった。
慶太は嫌がるだろうな。
加奈はそう思いまた憂鬱になった。
慶太は加奈にとって高校生の時恋に落ちた、初恋の相手だった。
そのときの慶太は世に言うイケメンと言う部類の生き物で、誰ものあこがれの的だった。
慶太と加奈は同級生で、高校2年のとき慶太からの告白を経てカップルになった。
そのとき加奈は信じられないほど幸せで、全ての運を使い果たしたのではないかと思った。
いや、実際使い果たしたのだと加奈は思っている。