――「鳴瀬さんって……、『鳴瀬 菜々子』さんですよね?」

………は。
何だ、その質問は。

「私以外の誰なんだよ……」

呆れて答える。

誰かが私になりすましても、何の得もない。
子育てと仕事に追われるだけだ。


「……いや、だから、…あの、私、読者なんです。
小説の」


「………え」

え。
おかしい…。
何でバレてんの。
私は誰にも言っていない。

私は会社で突然後輩に言われた事に驚きながら彼女を見つめ返した。