「あっ、あたしは!
佐藤君が“誰よりもサッカーが好き”っていう自信があるなら、これからも絶対続けていくべきだと思う。
だってそれはお兄さんにはない、佐藤君にだけ芽生えた大切な夢だと思うから…」


「俺の、夢…」


「そうだよ。佐藤君がサッカーが好きっていう思いは、きっと夢だよ。その夢はまだ芽を出したばかりなのに、もぎ取るようなことしちゃダメだと思う」


「…そんなこと言ったって、比べられるのが落ちなわけだろ?」


「でも佐藤君、比べられるのが嫌だからってお兄さんと同じ道を進んだところで、もう比べられなくなるの?きっと違うよね?
佐藤君きっと、同じ道を進むたびにお兄さんと比べられるよ。そうなったときのほうが、もっと苦しまない?
これなら好きなこと選べば良かったって、後悔しないの?」


「それは…」




返答をしていた伸一の口がピタリと動かなくなって、何も返してこなくなった。




「好きなことを選んだほうが、きっと後悔しないよ。
たとえそれが親に反抗して選んだり、苦しい結果になったとしても、絶対に後悔はしない。
……だって、好きなことを選んだ自分のこと、恨むわけないもん」




言葉に力がこもって、あたしの胸にも突き刺さる。



気が付くと伸一に言っている言葉はすべて、自分にも諭すように口にしていた。