でも、あたしは――。




「…比べられても、佐藤君は佐藤君だからいいじゃない」


「え?」


「兄弟のいないあたしが、こんなこと言っちゃってもいいのか分からないけど…。
あたしは、比べられても別にいいと思うよ。だって佐藤君は佐藤君で、お兄さんはお兄さんなわけで。夢とかやりたいこととか、好きなことや能力とかも違って当たり前なんだもん。
ずっと比べられたらさすがに嫌になるかもしれないけど、自分の望むもの以外を選んじゃうよりはずっといいっていうか…」




…あれ。

あたし結局、何が言いたいんだっけ?


言葉は時に、意思を邪魔する。



相談に乗ってくれた伸一に今度はあたしが力になりたいと思ったまではいいけれど、上手くそれを言葉にすることが出来ない。



急に黙りこんでしまったあたしを伸一が不思議そうに見つめてくるから、焦って頭の中にある浮かんだ言葉を必死に絞り出す。




「えっと、だからあたしが言いたいのは……佐藤君は佐藤君でいいっていうことなの!」




…ん?

これっぽいこと、最初にも言ったっけ?



伸一の顔がさっきよりも難しいものになって、あたしの顔も焦っているうちに戸惑ったものになる。



言っているあたし自身が分かってないのだから、伸一にも伝わるはずがないよね…。