「まあ、俺は今のままじゃ蓮高は無理だろうな。あそこはA判定でも受かるかわかんねぇし。
……それでも親はさ、俺に受験してほしいみたいだけど」


「……」




親のことを話す伸一は、もう何もかも諦めてしまっていたいに嘲り笑う。




「蓮高は進学校だから、部活とかは続けるだけで精一杯になると思う。だから中学みたいにサッカーばかりには打ち込んでられねぇ。
だけど俺は、サッカーだけはちゃんと取り組みたい。でも蓮高だと、それは無理なことだよな…。
だからって他の高校に行けば、比べられるのは目に見えてるし」




あたしは一人っ子で兄弟姉妹もいないから、伸一のように比べられたりする経験はないけれど。


引け目を感じてしまう気持ちは、少しだけど分かるような気がする。



あたしはピアノが大好きでピアニストになりたいとも思っているけれど、お母さんほどの才能はないと思っている。



家族なのに同じような能力がないってことは、まるで自分だけ違うみたいに感じられて…。



疎外感というか、自分は出来損ないだと思ってしまう。



伸一が感じているのも、そういうことなのかな…?