今あたしの隣にいる伸一は、夢がないと言っていた彼とはまるで別人。



生き生きとした表情を見ていたら、少しだけど元気になってくれたのかなって思う。



…なんだ。

佐藤君、ちゃんと好きなことあるんだね。



夢がないって言っていたとき、てっきりそれさえもないのかと思ってしまった。




「じゃあ佐藤君、高校でもサッカー続けるの?」


「…さぁ。それはどうだろうな」


「好きなのに、続けないの?やりたいことがサッカーなんでしょう?」




思わず続けざまに質問してしまうと、伸一はうーんと首を捻った。




「サッカーは好きだし、これからも続けたいって思うよ。
でも……もし兄貴たちと同じ高校に進学したら、それは難しいかもしれない」


「お兄さんと、同じ高校…」




伸一を縛り付けているのは、やっぱりお兄さんたちと比較されることで。


彼の道を塞ぐ壁も、なんだかあたしの壁と同じくらい高くて頑丈そうだ。




「お兄さんって、どこの高校に行っていたの?」




おずおずと聞けば、さらりと返事が返ってきた。