「伸一とは何も約束してないよ。明日はお母さんと出かける約束があるの。だから遊ぶのは、明後日でも良いかな?」


「あっ、そうなんだ。分かった、明後日でも大丈夫だよ。……っていうか佐奈、佐藤君とデートの約束ぐらいしておきなさいよ!」


「えっ!?」




恐ろしい形相にたじろぎながらも事情を話すと、返ってきたのはさっきまでの会話とは矛盾している内容だった。




「時間がある春休みの間にデートしておかないでどうすんの!せっかく付き合うことになったんだから、デートの約束しなくちゃダメじゃん!」


「えっ、えっと……そうなの、かな?」




伸一との約束がないことを伝えたら喜んでくれるのかと思ってたけど、むしろ逆に説教されてしまった。



さっきまで優先するとかしないとか話してたから、こんな風に言われたのは驚きだ。



……何だかんだ言いつつ、伸一のことを優先しても良いって思ってくれているのかもしれないね。



恋を諦めようとするあたしの背中を、ずっと押してくれていたぐらいだもん。




「あー、何か佐奈は奥手だから心配になってきた!こうなったら明後日は、とことん佐奈と佐藤君のこれからについて話し合わなきゃね!」


「ははっ、何で明日美が張り切ってんのよ。……っていうか、あたしの予定も確認してよね!」


「流歌はいつだって暇でしょ?」


「そんなことないよー!」




一人で意気込みながら歩き出す明日美を、ぶつぶつ文句を言いながら流歌が追いかける。