「……ありがとう、麻木」




照れたのか問題集を見ながら、真藤君は小さく呟いた。




「俺、頑張るよ。
……だから、麻木も頑張れ」




目は合わなかったけれど、真藤君が言いたいことはなんとなく察した。



だからあたしは頷きながら「うん」と力強く返す。



真藤君の夢が叶えばいいと、心の中で願っていた。





◇◆◇◆◇




――…♪~♪♪~~♪……




真藤君の夢を聞いた数時間後。



あたしは自宅のピアノの前に座って、ずっと作曲を続けていた。



結局学校では何一つ上手く作れなくて、今こうやって作曲しているわけだけど……。



それでもまだ、頭を悩ませていた。



メロディーを繋いでいた手が、気力を無くして唐突に止まる。



メトロノームの音だけが部屋内に継続して鳴り響き、虚しさを覚えた。

ため息をつきながら、その音を止める。




「……ずいぶん、苦労しているみたいね」




あたしはその声に力なく頷きながら、リビングのソファーに振り返った。