そうして、高校生活のスタートを切ったわけだが、
どうにもその生活には慣れなかった。

というのも、相手と接することがなによりの苦痛だった。

「ねね、奈央ちゃんって呼んでもいいかな?」

後ろをポニーテールでくくった、元気そうな女の子だ。
私は、愛想笑いをして、うなずく。

「奈央ちゃんかわいいよね。あたし、入試の日から思ってたんだ。」

「ありがとう。」

この子は入試当日、私などに目をとめることができるほど、
自信があったのだろうか?

「さっきもね、男子がかわいいなって言ってたよ」

返す反応に少し戸惑いつつ

「私、クラスとかでもうくほうだから、逆に目立つんだと思うよ。」

もちろん、あの出来事があるまでは、毎日友達に囲まれていた。
いや、その後も囲まれていたことは囲まれていた。

でもその中では、一方的な会話しかなかった。

九月半ば辺り、一番仲の良かった友達に泣きつかれた

「元の奈央に戻ってよっ・・・―――!!!」

他の友達は、その子を抱きしめていた。
それは言っちゃだめだよ・・・さゆの気持ちはわかるよ・・
と・・・・

「奈央ちゃん、クールなんだね。」

この子の相手をするのも息苦しい。
もう、関わらないでほしい。

「私なんかを相手にしてる暇があったらカッコいい男子でも探したほうがいいと思うよ」

その少女は、一瞬顔を硬直させ、笑顔で言った。

「ほんとに自分がかわいいと思ってんの?あんたよりかわいい人間なんて、いっぱいいるじゃん。」

体が凍りついた。当たり前だが、何も言い返すことはできなかった。
自分が招いた結果なのだから。

「サキー今日一緒に帰ろうよー」

どうやらその少女はサキというらしい。

「うん!当たり前じゃんー」

私は一体、どんな表情をしていたのだろうか?
いまにも泣きそうな顔だったのだろうか?怒りが抑えきれないような相だったのか?

この学校では、私は忘れられたような存在で生きていこうと決心した。