「 ありがとな 真木 」


俺は

茶髪をひとつに結び
薄手、臙脂のコートの裾を翻す真木に
深く、頭を下げる




関係者入口から表に出ると
春先の、明るい空


どこか 花の香りを運んできそうな
暖かい風の中で、ひとつ 息を吐いた


「 気にすんな いい絵撮れたか? 」


俺は嬉しくなって
言葉で反応すればいいものを
頷くだけで、返してしまう

しまった と自分でも思ったけど

「 ガキかよ 」


そう笑われて、
顔が赤くなって行くのが判った




「 …でもよ 真木 」


…話を逸らした訳じゃないが
疑問に思った事を再度
真木に質問してみる


「 あ? 」


「 … 個人で借りられるなら
なんで皆、

――― 例えばアマチュアバンドとか

まあ…
一万や二万じゃ無理なのは判るけど 」


「 いや?

結構有名ドコでも
何十万単位だったりするぞ?
大台乗るトコもあるけどな 」


「 ―― え… にしたって
じゃあ余計…なんでだ?

皆、憧れてるだろ?
こういう広い場所でやるの 」




「 ―― まあ カンタンに言や

ネックは、設営とかだな 」


「 ――……あああ そっか…!」




真木の協力で
撮影許可を貰った公会堂から
駐車場を抜けて、道路に向けて歩いた


俺は今

"BQーFRONT"という、映像製作会社で
まだまだ使い走りだけど
毎日忙しく、働いている