カーテンの付いた小さな小窓と
金の丸ノブが付いた扉


サンダルを足早に擦る音と
歩幅の広い靴音が、廊下に響く




今は止まっている
ジャバラ型のヒーター

その横から、梅川さんが
カラカラと点滴台を移動させて来た




ソファーにぶつかり、
一度引っ掛かってしまって
俺は支柱の真ん中を握り持ち上げ
ベットの横へと移動させる


「 ありがとう〜! 岡田くん 」

「 ―― いえ 」


「 いやあ…
岡田くん、そして皆も

やっとスタートラインに立ったねえ 」




「 え…
俺、関係なくないですか

――― ドンジリも…いいとこで 」




「 スタートは遅かったけど
最速じゃないか 岡田くんは
あずるちゃんの中に、入る事 」



「 ―――… 」


「 ――… あずるちゃんにしてみても
もしかしたら、少しくらいは彼等の事を
恨んだ時期も、あるかもしれない


そんな中で君と

――― 絶対に会いに来てくれる

自分を庇ってくれる人に出会えて
心が揺れない女の子は居ないと思う


ここまで答が出なかったのは
そういう君の存在と

―――― 思い出せ無い自分の過去に

まだまだ不安があったせいもあるだろう


でもこうやって ――――

あずるちゃんの中に
ずっと入る事が出来なかった
真木くんも、彼女の内に入って


そして今までの
彼女を大切にして来た時間


もう、誰をあずるちゃんが望んでも
不思議では無くなって来たよねえ… 」