真木は、困った様に眉を下げ
煙草を持ったままの手で
茶色い前髪を かきあげる
「 …… オレの持ち物、価値観
全て壊して行く
最強の敵が、過去にいたんだよ
―― 被り物の下の服がさ
その敵が着ていたのと良く似た
水色のワンピースだったんだわ 」
「 …―― 真木が、怖がる って… 」
「 それで一度、オレは全て諦めてる 」
「 ―――― 真木が… 無抵抗? 」
「 … どうしても
手をあげられないんだよ
その、相手には 」
「 ………… 」
「 …青山は動転した中
アズルの命を確保する事に動いて
――― ハルトは
暴れ狂うヤツを落とし
… 自分だって、心配なハズなのに
オレらの穴を埋める為に
即座にステージに立った
救急車に乗り込んでからは
意味不明に、オレも無駄に騒いでたけどな
…… 真っ先に割って入った池上が
肩を大怪我してたのも
随分後になって知ったし
――― 意識
意識がないはずのアズルが
ボロボロ涙、零して泣くのは
こんな情けないオレの血が
コイツの中に入っちまったせいなのかな
… とかな 」