「 ――― "亡国の王"って言ったのは
比喩じゃねえんだよ 」
コーヒーを注いだマグカップを
梅川さんが、俺達の前にも置いてくれて
カルテが並ぶ
机の前に座った後ろ姿に
二人で一度、お辞儀をした
「 一気に興され、そして終わった国
その光の部分も闇の部分も
全て見て育ったのが、青山だ
だからかなり、
辛い思いもしてると思うぞ 」
「 …抽象的過ぎて判らない 」
「 ま、平たく言ったら
時代を席巻した
ある大物ミュージシャン
――― "VOICE"のドラマー
"玲志"の、息子なんだよ 青山は 」
「 ―――… は…?!?!
VOICEって… あのVOICEか?! 」
「 そ あの"VOICE"な
近年のロック史に、
いまだ色褪せず名を残すバンド
解散してから
二十年以上経っているのにも関わらず
ベストを出せば、ランキングに
易々と入って来るバケモノバンドだ 」
「 …―― 去年の、野外
あの人達、出てたよな…? 」