強い風が吹いて 桜が揺れる ――――




真木の胸に顔を埋めていたアズが
少し体を起こした




「 ……… クウヤ 」


「  何だよ  」


「 ――… 私

松田さんの奥さんの…
花ちゃんに 昔 …… 会ってるね…? 」


「 ――… おう、会ってるぞ

去年の"夏の陣"
那智と一緒にいた、ミツコ
… アイツにも、オマエは会ってる 」




何処か ――――――


ゆっくりあげた 遠い瞳


その視線は、真木の腕の向こう







薄紅色の花に、提灯のあかり


赤く染まる瞳が
真木の指先に流れた




「 ――― 二人で…

旗が …… あった


" あれなに? "って聞いたら


" あれ以上、
行ったらいけないって印だ "って… 」


「 ――… いつの話だよ

皆で海、保養所行った時
泳ぎ、練習してた時か 」


「 ――――… 違う




この指輪、売って


二人で流氷  見に……




―――― 駆け落ち、した 時…… 」