椅子から立ち上がり
自分もそこへ向かおうとして
―― そんな場合じゃない事を思い出した
去年の冬
マンハッタンの町
アズを俺のせいで、
本当に危ない目に会わせた事があって…
それを父親のこの人が
知らないはずが無いんだ
『 …知らないよ 誰も教えてない 』
「 え… 」
俺の横を通り過ぎざま
灰谷の声が置かれて行った
その足は、玄関先に向かう
… 当たり前か 言えないよな…
だからこそ俺も
―― 本当は死ぬ程 アズに会いたい…
だけど、会いづらくて…
食って寝るどころじゃなくて
家にも戻らない日々
仕事がそんな風に本気で
忙しかったってのもあったけど
年始の挨拶メール以外
ほとんどアズと、連絡を取っていない
… バレンタインの頃に
日本に帰って来てたのも、今
初めて知った…
… 俺、もしかして
もう、完璧にフラれてるのか…?