「美味しくなかった、というよりは『幸せな気持ちにならなかった』って言った方が正しいかな。」

「幸せな…気持ち…。」

「僕はね、ひなちゃん。」

「はい…。」


急に朝比奈さんの顔が少し真剣になる。
きゅっと右手がまた包まれる。今度は少しだけ、強く。










「僕は、君だけのテイストで作られたケーキが食べたい。」





「私だけの…テイスト…?」










そう問いかけると、朝比奈さんは目を細めて微笑み、小さく頷いた。