忘れられない思い出。
思い出の中のひーくんはいつも優しくてかっこよくて、
いつもあたしのそばにいた。


それだけ。


なのに忘れられないんだ。もうその人はいないはずなのに、
どうしてもその背中を見つけると追いかけたくなってしまう。


「つーか今ちょっと発見してんけどひかる日本史の戦国らへんになると寝るよな??」
笑い半分、疑問半分で優斗が聞いてきた。

「あー確かに。まぁ日本史は基本つまんないけどねー」
笑いながら綾人も続けた。

眠たくなるんじゃない。
自分の心に言い聞かせた。


(聞きたくないもん…)


子供のころから何度となく聞かされてきた戦国時代のお話し。
普通の庶民の家に生まれたらこんなこと聞かされる必要なんてなかったはずなのにと、なんどとなく心の中でおもった。


あまりにも突拍子もない話だから、誰かに言ったことなんてないし、
自分だって初めて聞かされた時にはわけがわからなかった。

(だって5歳の娘に普通いきなり、『あなたは将軍の娘なのよ』って言ってだれが理解できんのさ…)