それは、今よりもずっとずっと昔のお話し。
いわゆる戦国時代まで遡る。
世は乱れ、時代が徳川勢力に飲み込まれようとしていた中で
今もなお生き残ろうとあがく二つの家があった。
「五十嵐」と「桜宮」家の両家。
これらはけっして歴史上で知られるような名家ではなかったが、
いずれも互いの将軍のために何時何どきであっても尽力してきたことで知られていた。


それが今や。
徳川家による天下目前で、すべての軍が壊滅へと追い込まれ、
この二家も例外ではなかった。
しかし、こんな有様であってもなお、かれらは互いを憎み続けていた。
五十嵐の家は自らの将軍を死へと追いやった将軍、明智光秀直属の部下に属していた桜宮を。
桜宮家は一切の物欲を禁じ、極限まで戦場に駆らせていた織田信長の部下五十嵐を。
およそ末代までこの恨みは果てない。


死してなお、彼らの子孫がこの世にはこびり続ける限り。